星のラブレター 特別企画 闇に架かる橋 |
| 1年前のあくる日、友人の妹が、付き合っていた男から凄まじいまでの暴行を受ける。 家族・親戚で救出したのだが、その日から男はストーカーと化し、現在も彼女を執拗に追いかける。 この物語は1年間以上に渡り、今も尚、進行形のストーカーとの戦いを描いたノンフィクションの物語である。 |
| 第1章 逮捕までの道程 2003年 5月08日(木) 有紀(ゆき)には海貝(かい)という妹がいる。 その海貝から有紀に1ヶ月ぶりに電話がかかってきた。 海貝「おねーさん...」 有紀「どうしたの?!」 海貝「うん...携帯壊れちゃって...」 有紀「今、どこからかけてるの?」 海貝「会社から...」 海貝「おねーさん、明日空いてる?」 有紀「空いてるけど、どうしたの?」 海貝「ちょっと話があるんだ...」 有紀「いいよ、家に来る?」 海貝「...明日、時間がないから西陽町まで来てくれる?」」 海貝「それと、おねーさん、びっくりしないでね。私の顔を見ても...」 有紀「えっ?!どうしたのさ?」 海貝「...明日話すね。」 有紀「う、うん...分かった」 有紀は海貝と明日会う約束を済ますといつものように夕飯の準備に取り掛かった。 2003年 5月9日(金) 西陽町のジャスコのファーストフードで海貝と待ち合わせていた有紀はふと疑問に思った。 今までこんな所で待ち合わせたことないのにどうして今日はここなんだろうと... そんな疑問を持ちながらも海貝を待っていると待ち合わせの10分遅れで海貝がやってきた。 海貝は帽子を目深く被り、顔を出さないようにしていた。 海貝「お待たせ...」 有紀「こんな遠い所まで呼び出さないでくれるー」 海貝「ごめん...地元じゃ話せないから。」 有紀「どうしたのさ?」 海貝「携帯壊れたって言ったでしょ?!実は彼氏に壊されたの...」 有紀「えっ?!そうなの?」 海貝「それに暴力も振るわれてるの...」 有紀「えぇ〜〜〜っ!!!!」 海貝「ほらっ...」 そう言って海貝は目深く被った帽子を少し上にあげた。 有紀「はっ?!」 有紀「顔とかアザになってるじゃん!ひどいよ。これは...」 海貝「別れたいんだけど...」 有紀「こんな暴力振るうヤツとは別れなよ!」 海貝「別れ話したら暴力振るわれたから、それ以来、恐くて言えなくて...」 有紀「なに、そいつ...」 海貝「駅で彼氏が待ってるからもう行かなくちゃ...」 有紀「えっ?!ちょっとしか時間経ってないよ?!」 海貝「地元じゃ彼氏が駅で待ってるから会えないし、会社に行く以外はほとんど監視状態だから...」 有紀「....」 海貝「ごめんね...おねーさん。もう行くね。」 有紀「わかった...」 海貝「また電話する...」 そう言って海貝は帰っていった。 そのうしろ姿を見つめながら有紀は妹のあまりのショックな出来事に頭の中を整理出来ないでいた。 2003年 5月12日(月) 2003年 5月12日 午後2時53分、僕の携帯に有紀からメールが入る。 メールの内容は、妹に彼氏が出来たみたいなんだけどその彼氏に暴力を振るわれているとの事だった。 僕は「おいおい、大丈夫かよ!そんなヤツと付き合って。」とそんなに深刻に返答するわけでもなく、 有紀に返信していたのを覚えている。 いつもはそんな事があるとすぐに駆けつける僕が深刻にならなかった理由には、有紀の妹と年末以来、 ケンカになっていて口も訊いていなかったせいもあるかも知れない。 僕と有紀の妹の海貝(かい)はよくケンカをする。 年は6才離れているのだが、年上の僕を年上と見てないような口の利きかたをするし、自分勝手な所があるのでたまにカチンとくるのだ。 有紀と海貝は僕を兄貴みたいに慕ってくれる事には凄く嬉しいが、その分ぶつかり合い、ケンカもよくするので冷却期間もけっこう長い。 有紀は海貝と話した内容を1語1語丁寧に話してくれた。 話を聞き終えた僕は、その内容にそれまで気楽に考えていた自分がどんどん不安になっていくのが分かった。 2003年 5月15日(木) 僕と有紀との出会いは某コンビニで店長と店員として以来、友人としての付き合いが7年になる。 妹の海貝とも6年の付き合いとなる。 恋人でもないのに家族間で親しくして付き合ってきたのだ。 なので海貝の事に関しては僕によく相談する。 午後1時半頃、有紀から電話がかかる。 内容は海貝から電話があったのだが、電話の内容がおかしいというのだ。 海貝の電話での様子が只ならぬ雰囲気だったらしく、いつもは天然の有紀もその異様さに気付いたのだ。 電話で有紀が海貝に何を言っても小声で「うん、うん」と頷くだけで会話らしい会話をしないのだそうだ。 後で聞いたのだが、どこへ行くにも彼氏がくっついてくるらしく、この日もすぐ側にいたので何も話せなかったというのだ。 その2時間後、新たに海貝から有紀に電話がかかる。 病院の電話からかけてきたものであばら骨が骨折し、鼻の骨が折れていたという内容だった。 海貝は、この何日かで骨が折れるほどの大怪我を負わされていたのだ。 それは僕が思っていた以上に事の重大さを物語っていた。 海貝と電話を終えた後、有紀は僕にすぐに連絡を入れた。 そして僕は「どうしてそこで海貝を迎えに行かなかったんだ!すぐに海貝を迎えに行くべきだ!」と言ったのだが、 有紀は「あまりのショックでどうしていいのか分からなかったから...」とオロオロするだけだった。 その夜、僕は有紀にメールを打った。 「家族のみんなに言ったのか?」と... しかし有紀からは「まだ言ってない...」という返事が返ってきたのでさすがに僕がイライラして 「海貝のアパートを教えろ!あんたらが行かないなら俺が行くから。」と言ったのを期にようやく旦那に話し、 親戚一同も総動員して海貝のアパートに向かうのであった。 海貝のアパートに向うとすでに親戚一同が先に海貝のアパートに到着していた。 「いた?」と有紀に尋ねると「まだ帰ってきてない」という有紀の返事。 僕たちはその場で少し海貝を待つことにした。 しばらくして有紀の子供と遊んでいると、自転車に乗った男がアパートの前を通った。 こちらをちらちら見ていたので少し違和感を感じたのだが、まさかその男が、海貝の彼氏だったと 後に気付くことになろうとは、この時は知るよしもなかった。 普通の人間なら、我々を気にすることなくアパートに入っていくだろう。 でもその男は入らなかった。 向こうも我々の存在を警戒していたフシがある。 というのも少し前に彼氏の携帯に有紀が電話をしていたのである。 海貝の携帯は彼氏によって壊されていたので、彼氏に電話をかけなければ 海貝と連絡が取れないようになっている。 だから仕方なく有紀は彼氏に電話をしたのだが、この行動が 彼氏に我々の存在を気付かせるきっかけになったのかも知れない。 警戒心が強いから、ピーンときたのだろう。我々が海貝の身内だと直感で気付いたのかも知れない。 自分が置かれている立場を理解しているからこその行動である。 かなりのツワモノだ。 今までも同じような事を犯して、こういう場面に出くわしているからこそのなせる業だ。 何事もなかったかのように我々の前を自転車に乗って素通りしていった。 アパートの近くのコンビニの前にいた有紀の旦那が、何やら騒いでいる。 どうやら、海貝の彼氏は、この近辺のかなりのワルであるとの情報を友人から手に入れたみたいだ。 こちらも相当、心してかからないといけないみたいだ。 我々にも緊張が走る。 と有紀の電話に海貝から電話が入る。 有紀「今どこ?えっ?!警察?何で?!」 海貝が駅前の交番にいると本人から連絡が入ったのだ。 あまりの展開に我々も驚きを隠せなかったが、すぐさま駅前の交番に向った。 駅前の交番に到着すると、そこには海貝と海貝の会社の同僚2人が警察官と話していた。 会社の同僚2人が今、彼氏も来て心配して帰っていったという。 「優しい彼氏だね〜」と話していたと言い、「あそこにまだいるよ」と言って1人の男を指差した。 その男の方を見ると、なんとあのアパートの前を通った男ではないか。 あの時、違和感を感じたのは間違いではなかったのである。 急いで、その男を追ったのであるが、一足先にその男は自転車に乗ってどこかに行ってしまった。 親戚の陽ちゃんが、「今度はアパートに帰ったかも知れないな」と言うので 僕と陽ちゃんが、すぐさまアパートに逆戻りした。 陽ちゃんは血の気の多い方なので、すでに戦闘する気満々である。 5分ほどでアパートに到着したのだが、アパートの中には人の気配はなく、しばらく待っても 彼氏も戻ってくる気配はないので、また駅に向かった。 交番に戻ると何やら交番の中が騒がしい。 有紀に事情を聞くと海貝がトイレに閉じこもって出てこないとのこと。 有紀の話によると、最初、海貝は会社の同僚に連れられ交番に来たというのだ。 会社の同僚が、海貝の顔が恐ろしいまでに腫れあがっていたので 「どうしたの?」と聞くと海貝は「さっき知らない人に殴られた」と答えたのだという。 それなら警察に被害届けを届けた方がいいというので交番に連れてきたのだ。 ...だが、当の本人はトイレに閉じこもってしまった。 日崎おばさんが必死に説得にあたっている間に、警官が僕たちに事情を聞いてきた。 続く。 |
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